[13]アナログプレーヤー雑談 SME(イギリス)


SME(イギリス)

どうも人間というのは突っ走リ過ぎると後ろを振り返るものらしい。これを「反省」というのだが、ことオーディオ界でも後ろを振り返る現象が起きているようだ。特に今年は20世紀最後の年ということもあり、21世紀に繋ぐ歴史的製品を残そうとする動きがオーディオだけでなく各業界にあるようだ。

先日、ハードオフというリサイクル店が近所に出来たという話をしたが、そこには往年の名盤といわれるようなレコードがタダ同然な値段で売っている。森高のEP盤もあったし、紙の袋に入ったSP盤もあった。違うコーナーを見てみれば、ジャンク品のところにはアナログプレーヤーが無造作に積み重なっている。おおリニアトラッキングのプレーヤーもあるじゃないの!?値段は500円から選り取りみどり。

考えてみれば、デジタルがアナログよりすぐれているということは無いし、大体比較するほうがおかしい。これだけのアナログ製品がリサイクル店で再び活躍する日を待っているのだ。これをほおっておく手はない。

世間も同様な意見なようで、オーディオ専門誌などではアナログ版の特集をしているという。ふとテクニクスのホームページを見たら、アナログプレーヤーのセッティングを懇切丁寧に説明しているページを発見した。ということで、デジタルに突っ走った人類は今アナログを見直している。これは間違いない事実なのだ。こういう反省は大いに歓迎したい。

アナログプレーヤーを構成するパーツは、おおまかにターンテーブル、トーンアーム、キャビネットそしてカートリッジだ。これらを自由に組み合わせコンポーネントを楽しむ。これが正しいやりかた。しかも色々いじくっても当時は予算10万円もあれば楽しめた。アナログプレーヤーは言ってみれば音の入り口だが、その入り口のクオリティが10万円で楽しめるというのは破格だ。音の出口であるスピーカーをいじったら少なくともゼロが一個多く要る。つまり100万円からの仕事だ。そういう意味でも手軽に楽しめるアナログプレーヤーはいじり甲斐があった。

当時(1970年~1980年)キャビネットとターンテーブルは重いほどいいとされていた。これはスピーカーから出てくる音が再びカートリッジから吸収される現象「ハウリング」を剛性で跳ね飛ばし、防止する効果がある。逆にカートリッジやトーンアームは軽いほうがいい。そこで登場するのが軽量トーンアームのSMEである。

SME(エスエムイー)はスケール・モデル・エキュイプメントの略で、元々はイギリスの模型屋だ。社長のロバートソン・エイクマンが趣味で製作したトーンアームがマニアの目に止まり製品化された。1959年のことである。その方式はSME方式と呼ばれ、後のトーンアームの標準規格にまでになった。

初代トーンアームは3012というモデル。最後の数字「12」は12インチというアームの長さを示しており、ほかにも3009、3010などのモデルがあるが、私には3009が馴染み深い。

SMEのトーンアームは上から見るとJの形をしている。ナイフエッジで支えられた回転軸後方には、左右のバランスを保つためにウエイト調整を兼ねた、ラテラルバランスウエイトを備える。他のメーカーではこのラテラルバランスウエイトを不要とするためにS字型のアームが採用され、ほとんどのトーンアームはS字型になったがSMEの30xxシリーズのアームは今でもJ型である。

アームリフターやインサイドフォースキャンセラーの細かい細工は芸術と呼べるものであり、今尚美しい。またカートリッジシェルに開けられた無数の穴は軽量化を強烈に打ち出したデザインである。そう3009は軽量カートリッジを装着するために生まれたようなもの。SMEのアーム軽針圧のカートリッジを用いた再生を得意とするものだ。

当時のカートリッジは大きく別けるとムービングマグネット式とムービングコイル式があった。中でもシュアー(USA)はムービンググマグネット式の優れたカートリッジV-15シリーズを1964年から販売しており、このSMEのアームはこのカートリッジとベストマッチングした。レコードを再生するのには大体2gくらいの針圧をかけるが、このコンビは1gでも楽々トレースする。当時流行ったトラッカビリティという言葉はこのコンビのための言葉だったように記憶している。

ちなみにSMEは今でもアームを販売している。価格は以下のとおり。当時から比べるとかなり改良されているようで、値段もかなりアップしてしまったようだ。それでも一生ものと考えれば破格に安い。SMEはこの他にもダイナミック型のアームを発売しているが、ちょっと馴染めない。性能は良いのだろうけど。

2000-08-12

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