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第9回
4色の絵の具
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〜色をつくることまで楽しめる授業〜
◇Yちゃんの道具箱◇
小学校の図工の時間でした。その日は水彩絵具で絵を描く授業だったのですが、ある女の子の水彩道具が、どうも不思議。周りの子供たちが「私24色」「オレはエメラルドグリーンも入っている36色だ」などと言葉を交わしているのに対し、その子はたったの4色しか、持っていなかったんです。赤、青、黄色。それに白。
教師が「Yさんはなぜ4色しか持ってこなかったんですか?それでは描けないものも出てきてしまいますよ」といったところ、Yさんはちょっと困った顔をしながらも「白以外に必要な色はこの3色です。この3色があれば、ほとんど全ての色をつくることができます。」と答えたんですね。私は幼いころこれがとても衝撃的で、しかもその子が絵がとてもうまかったこともあって、目から鱗、という心持ちでした。
教師「それはでも、大変じゃない?」
Yさん「大変なことを楽しみなさい、と父に教えられました。絵を描くのも楽しいですけど、色をつくるのも楽しいです。今ではピンク色もつくれるしどんな色だってつくれます。市販のものみたいに鮮やかな色ではありませんが。」
Yさんのお父さんは、プラモデル屋さんを経営していまして、自身も非常にプラモデルの製作が好きな人なんですね。ですから、色を塗ったりすることも当然出てくるわけですが、そういった自身の知恵を娘に教えるという姿勢がきちんとできているというところが、非常に魅力的に思えました。
お父さんが生業としているものから経験したこと、学んだことを、子供たちに教える。それがその他の場所で活躍している、きちんと役立っている。それが「ああ、教育ってそういうことなのかもしれないなあ」と、後に私にそう考えさせました。ちょっと大げさですかね?でも、本当にすごいな、と思えたんです。
私の両親はどちらも教師。教師としての教育が当たり前でしたから、その他の部分に専門的な知識を持っているお父さんやお母さんには憧れましたね、「君んちのお父さん、そんなことまで知ってるの?えっ、そんなことを教えてくれるの?」なんて。ウチはその他の「お得な知識」に、まるで疎い家庭だったので(笑)。
◇子供の魅力はその感性◇
さて、その図工の時間、先生が、それではみんな、他の色をしまって、今日は
4色だけで絵を描いてみよう、と提案しました。(これはYさんにとっても、すごくうれしかったに違いありません。)いつも上手に絵を描いている子供たちが、必死になって色をつくって「もう、全然いい色がつくれない!」と嘆いている。逆に、いつもはこの時間をつまらなそうに過ごしている男の子が「こんな色つくれた。これはね、こうやるんだよ」と、新たな色の発見、また、その色の作り方、絵の具の分量をほかの子供たちに教えている。子供たち同士で色の交換が始まる。
「その緑くれよ。こっちの緑、やるから。」
「やだよ、汚いんだもんその緑。」などなど・・・。
思いがけずに始まったその特別な授業は、非常に満足行くものでした。私も、今でもその時の感動が忘れられず、子供たちと一緒の時間を過ごすときには必ず提案をするようにしています。これは小学生でも、中学生でも高校生でもかなり楽しんでくれます。一度、その中で、ある子供がこんなことを言いました。
「黒をつくるのは簡単だけど、白は一度色を混ぜちゃうときれいな白には戻らなくなっちゃう。人間みたいだね。」何気なくぽろりと口にした言葉ではありますが、ちょっとドキッ・・・。そういう感性を伸ばしてあげられるような、せっかくにょきにょきと育っているアンテナをポキッと途中で折られてしまうことのないような、余裕のある環境で子供たちが大人になっていけたらいいのにな、と、考えさせられてしまいます。
現在、教師以外のさまざまな活動をしている人たちが、学校で子供たちと交流することが多くなってきています。そのことが功を奏し、さまざまな人々の言葉や実験的なユニークな授業を通して、子供たちが学校外の場所に目を向ける機会が増えました。一緒に生活をしていないからということもありますが、そういった経験豊かな外部の人たちの「授業」が、とにかく楽しい、と思っている子供達は少なくはありません。Yさんのお父さんのように、一人ひとりの生徒の親が、先生になれるような、そんな時間をもっと子供たちに与えることができたら、素晴らしいだろうな。
2001.10.28 |
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◆コハタジュンコ |
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創刊:2001.08.25 |
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更新:2008.11.19 |
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