愚かしく美しく

エロティックな巨匠たち
Part1

一見堅苦しいクラシックの世界。でもそこに潜むものは現実よりも官能小説よりもリアルでエロティックな人間の愛憎の姿。古今東西芸術の巨匠達の裏路地にご案内します。

朝比奈マリー

カテゴリ

エロティックな巨匠たち
Part1
エロティックな巨匠たち2〜歴史を彩る淫らな女たち〜
歴史を彩る限りなく魅力的なダメ男達!
 

ご案内

マガジンの登録と解除

朝比奈マリー自己紹介
あなたもライターになれる
 

Part1過去記事

 

Part2に行く

27 血の王女
26 毛皮を着たヴィーナス
25 サロメ幻想
24 ダナエの吐息
23 復讐のメディア
22 ヴィーナスの謎
21 血の婚礼
20 マハのほほえみ
19 血と砂
18 カルメン!
17 閉じ込められて
16 禁断の夜話
15 愚かしく美しく
14 血の滴るキャンバスその2
13 血の滴るキャンバス
12 聖なる快楽
11 謎の幻想庭園
10 サド侯爵 二人のヒロイン
09 「幻想交響曲」ある男の妄想と願望
08 SMの行き着くその果ては
07 エロティックな倭人たち
06 呪いのヴァイオリン
05 禁断のオペラ その2
04 禁断のオペラ
03 愛と罪と禁忌と罰と(雷帝イヴァンとその息子イヴァン)
02 青のエロス
01 倒錯した少女ジュリエット
00 ワーグナーが贈る、究極の性愛
 
第15回

愚かしく美しく

あなたがオペラに誘ってくださるなんて、どういう風の吹き回し?
それもプッチーニ版「マノン・レスコー」だなんて素敵ね。嬉しいわ!
・・・でも、男のお友達と行っていらっしゃい。その方が楽しいわよ。
まあ。あたしとじゃなきゃ行かないって言うの?
ダメよ。ミラノにいるのなら、あなたはイタリア・オペラを観なきゃいけないわ。

でもプッチーニ版はちょっと展開が荒いから、少しお話しましょうね。
ねえ、そこのレコードを取ってくださる?そう、それ。
「ああマノン、お前の愚かさが」というアリアよ。
なんて激しく切なく、そして惨めで安っぽいめろめろのメロディーだこと。
プッチーニ独特の高低激しい音域と合わさって、むせ返りそう!
 僕はと言えば?汚辱の階段をおりて
 君の犠牲、君の奴隷に甘んじている…
そう。将来を嘱望された騎士デ・グリュ―が全てを棄てて、
マノンを修道院行きから救って一緒に逃げてくれたというのに、
当のマノンは貧しい同棲に耐えられずに金持ちの愛人になったの。
それから3年ほど経った偶然の再会で、寄りを戻す場面の歌がこれよ。
 泥沼にはまりこみ、賭博台の英雄となり
 自分自身を売っているのだ…
結局貫通罪で二人は訴えられ、遠くアメリカの砂漠でマノンが死んで、
この物語は終わるのだけど・・・。

このオペラの元は、アベ・プレヴォというフランス人の神父さんが書いた小説なの。
色んな男達がマノンという女に惹かれて、劇やオペラにしているわ。
どこがいいのかしら?こんな淫乱で不実で贅沢で思慮浅い女の。
つまりセックスのテクニックと美貌だけが取柄!
それなのにある小説家は「マノン、お前がこの世に存在したら、間違いなく愛しただろう」
なんて言ってる。愛する価値なんて無いし、愛も伝わらない女なのにね。
男の全てを棄てさせ、人生を狂わせて、それなのに自分自身は決して傷つかない。
こんな女をフランスでは「ファム・ファタル(宿命の女・運命を狂わせる女)」と呼ぶわ。

そうね。中世のカトリック神父さんという、
性愛とは最も遠い人が描いたということも興味深いけど、
二人の逃亡の場面に、「マノンが宝石をかき集めるのに必死で捕まってしまった」
シチュエーションがオペラに加えられているのも不思議に思うわ。
どうしてマノンと言う女の愚かさを強調する必要があったのかしら?
マノンが実は純粋で、愛にまっすぐだってことにした方が良さそうなのに。
え?違う?そう・・・男のあなたはそう思わないのね。
ええ。純粋で有能な男ほど、しばしばこういう女を愛するものよ。

それにしてもマノンがデ・グリュ―をたぶらかしたのはわずか15歳よ!
その年の少女役はオペラではリリック・ソプラノと言って、
普通のソプラノより少し高い音域の歌手が歌うのだけど、
プッチーニはドラマティック・ソプラノという、悲劇性の高い役に当てられる事の多い声域
をマノンという少女役に割り当てたの。
マノンが如何に生まれつきの「女」であったかを象徴するかのようね。

デ・グリュ―を愚かだと思うかって?・・・ノン!一流の男だと思うわ。
自分が不幸に陥るのを分かっていながら、全てを捧げ尽くす。
「バカね、あたしがもっと幸せにできるのに」っていつも思うけど、
 僕を船の給仕としてでもお連れ下さい。
 どんな卑しい仕事でも、僕は喜んでまいりましょう!
なんて不貞の罪に問われたマノンに付いて行く場面で歌われると、
涙が出てしまうわ。

あら、時間よ。
もう着替えを済ませて出かけなくてはいけないわ。
後はゆっくり男同士で女性談義に花を咲かせていらっしゃい。
安心なさい。あなたが帰るまであたし、待っていてよ。

                         朝比奈マリー ミラノにて

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
おまけ:デ・グリュ―のその後  
「マノンの肖像」(マスネ作曲)
年をとり、疲れ果てたデ・グリュ―が、自分の甥と、マノンの姪との結婚の仲立ちをするコミック・オペラ

2003.07.19


スポンサード リンク

エロティックな巨匠たち


 

たまごや

アンコールワット世界遺産

ブルゴーニュ通信局

誰でもなれる国際人

知って得する労働法

週刊マナー美人

常識ぽてち

女性のためのクルマ読本

週刊節税美人

ファミレス様、覚悟せよ!

小口輸入支援・販路ドットビズ

お店で買うにはちと恥ずかしい


創刊:2002.10.15
訪問者数:
更新:2013.06.06
デジタルたまごやトップ