閉じ込められて(プッチーニ「蝶々夫人」)

エロティックな巨匠たち
Part1

一見堅苦しいクラシックの世界。でもそこに潜むものは現実よりも官能小説よりもリアルでエロティックな人間の愛憎の姿。古今東西芸術の巨匠達の裏路地にご案内します。

朝比奈マリー

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エロティックな巨匠たち2〜歴史を彩る淫らな女たち〜
歴史を彩る限りなく魅力的なダメ男達!
 

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22 ヴィーナスの謎
21 血の婚礼
20 マハのほほえみ
19 血と砂
18 カルメン!
17 閉じ込められて
16 禁断の夜話
15 愚かしく美しく
14 血の滴るキャンバスその2
13 血の滴るキャンバス
12 聖なる快楽
11 謎の幻想庭園
10 サド侯爵 二人のヒロイン
09 「幻想交響曲」ある男の妄想と願望
08 SMの行き着くその果ては
07 エロティックな倭人たち
06 呪いのヴァイオリン
05 禁断のオペラ その2
04 禁断のオペラ
03 愛と罪と禁忌と罰と(雷帝イヴァンとその息子イヴァン)
02 青のエロス
01 倒錯した少女ジュリエット
00 ワーグナーが贈る、究極の性愛
 
第17回

閉じ込められて (プッチーニ 「蝶々夫人」)

マエストロ、止めてちょうだい。休憩にするわ。
・・・ピンカートン、いらっしゃい。今日は全く声が出ていなくてよ。どうかして?
・・・まあ、役を降りたいですって!?
ピンカートン役はあなたの若々しい声にとてもよく合っているし、
あたし、あなたの演技にとても満足しているのよ。ねえ、訳を聞かせて。

なるほど。確かにピンカートンはオペラ史上、最強に情けない役所ね。
あなたの言うとおりだわ。掛け値無しのバカな男よ。
でもね、だからこそ最高にエロティックで面白い悪役だと思えないかしら?
いらっしゃい。途中だけど、舞台セットと小道具を見せてあげるわ。

さあ、あなたとあなたの蝶々さんとの愛の巣、素朴な日本家屋よ。
御覧なさい。ピンカートンが日本で蝶々さんと戯れの結婚生活のために買った家、
これがオペラ「蝶々夫人」全幕を通して唯一の舞台セットでしょう?
蝶々さんはピンカートンが日本から去って3年ほど、外出さえ殆どしないわ。
ひたすらピンカートンの帰りを待って、15歳から18歳までの花の時期を過ごすのよ。
そう。いわばこの家は鳥かご、それも特別残酷なね。

内緒でお先に蝶々さんの花嫁衣装を見せてあげる。
赤の色打ち掛けに小菊の簪。可愛らしいでしょ?チャーミングなイメージを大切にしたデザインよ。
オペラの方はプッチーニの好みで「純粋で薄幸な美少女」のイメージが強い蝶々さんだけど、
原作のロングという人の小説の蝶々さんは、英語を積極的に話したり踊ったり、笑ったり、
活発でそれは魅力的な女の子!いわば、モダンガールってとこかしら。

 「西洋の方は蝶の羽をピンで止めて箱に閉じ込めるのでしょう?」
 「愛しいものを逃がさないためにだよ」
この会話は二人の関係の最たる象徴ね。
こうしてピンカートンは一夜にして蝶々さんの羽を奪ってしまったの!
・・・一夜のセックスでこんなにも従順になるわけがないって?
あら、思春期の女の子は完全な人格者よ。硝子細工のようなね。
それはいつか自然に壊れてゆくものよ。無理に壊してはいけないの。
そんな時期に男性に抱かれることが、どれほどの影響を与えると思う?
それも彼女を「オモチャさん」と呼ぶような人間に半ばなぶり者にされたような形で。
ピンカートンのほうはさぞかしぞくぞくした事でしょうよ。
犬でも猫でも、元気の良い子が自分になついたときの瞬間を想像して御覧なさい!

そして蝶々さんはピンカートンの帰りを待ちつづけて、
3年の後、彼が母国で結婚している事を知り、その鳥かごの中で自害するわ。
どう?一応ピンカートンは心を痛めているけれど、
母国に帰ったらあの男のこと、「日本で傷つけてしまった女性が居てね・・・」なんて
吹聴して歩く姿が目に浮かぶわよ、あたし。
鳥かごに入れた、元気で可愛い小鳥がなついて大人しくなって、でも飽きて放置していたら、
自分の胸を突いてしまったなんて、男冥利に尽きるお話じゃなくて?

ま、結局ピンカートンは酷い男だけど、
それだけのセックスアピールがあった事だけは確かね。
ねえ、あなた、そんなわけだからもう一度二人の初夜、「愛の二重唱」からリハーサルよ。
そうよ。ピンカートンのために宗教も親戚も捨て、愛を捧げる蝶々さんの歌に対し、
あなたはひたすら「性奴隷にしたい」思いを込めて甘苦しく添えばいいのよ。

そうそう。その前にピンカートンが日本家屋につける鍵、選んでくれるかしら?
ええ。「日本は人も家も薄く軽い」と言いながら、二人の寝室ににつける鍵よ。
鍵と鍵穴は性器の象徴、なんて言ったのは誰だったかしら?
それから、障子の大きさはこれでいいかしらね?二人が倒れこむ影が映らなきゃ意味ないわ。
ベッドシーンのあるオペラなんてそうそう多くないのだから、拘りたいの。
こうと決まったら、リハーサルを再開しましょ!

え?やっぱり降板したくないって?・・・大丈夫よ、今更降板は赦さないわ。
あなたのオペラデビューでしょう?
是非、他の人とは違う、エロティックで肉感的なピンカートンを演じてちょうだい。

マエストロ!スタンバイお願いできるかしら?
え?聞こえないわ、なあに?
まあ!・・・あなたと今夜お食事をしたら、オーケストラピットに戻ってくれるって?
負けたわ!!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜おまけ〜〜〜〜〜〜〜〜〜

朝比奈マリーの本棚:「異聞蝶々夫人―ピンカートンの性の回想」 パウル・ラーヴェン著


2003.09.02


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更新:2013.06.06
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