多重債務からの脱出 -椎原里織-

ネットワークビジネス、付き合い、浮気・・・さまざまな理由で作った「その場しのぎのお金」が膨れに膨れ上がっていつの間にか多重債務に。債務整理現在進行中の多重債務者がお金の明暗をお届けします

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多重債務からの脱出Part2

マガジン発行履歴

椎原里織自己紹介

私もライターをやってみたい

多重債務に陥らないために

3

救済機関との連携

2

家族の絆

1

多重債務の兆候

椎原里織の新着コラム

23

勝手な行動?

22

電話帳でアポを取る

21

現金を作る方法

20

選ばれた優秀者

19

お金の感覚

18

2万円の価値

17

非常識を問うならば

16

口説き落とすためのテクニック

15

Rは私にとって

14

クレジット会社とサラ金のCM

13

詰め

12

最初の攻撃

11

多重債務へのきっかけ

10

誰が為にカード作る?(後編)

9

誰が為にカード作る?(中編)

8

誰が為にカード作る?(前編)

7

正式受理

6

告白〜Xデーにおびえる人たちへ

5

どっちが怖いでショー

4

自分ひとりの問題ではない

3

任意整理−怖いものは何か

2

面接第1回目と取り立て

1

ネットワークビジネス

第6回

告白〜Xデーにおびえる人たちへ


 弁護士事務所を訪ねてから4日。今月は給料日通りに全額給料が出た。

 この中から7万円を抜いて、彼氏に渡した。弁護士に「任意整理」を正式に受任してもらうための費用である。何が何でも確保しなければいけない。

 私の彼氏は幸いにもお金には厳しい人である。私と違って計画をきちんと立てて、貯蓄もしている。

 まあこれは、彼氏が月給40万円ほど稼いでくるので可能なわけだが。

 私はといえば、休みも月に3日から4日。正社員なのに月給は12万円。ボーナスもない。取材の費用は自分が出すし、締め切りにでもなれば、夜を徹しての編集作業が行われる。

 時間だけで言えば、彼氏より多く働いているのは間違いない。

 でも、お金が無いのだ。私には。

 その日もいつもどおり仕事を終え、私は帰宅の途についた。通勤は毎日片道1時間半。車で会社に通っている。

 運転は嫌いじゃない。だからこの長い道のりも苦ではない。

 夕焼けを右手に見ながらいつもどおりの道を走る。もうじき秋とはいえ、まだまだ空気が暑苦しい。コンビニの駐車場が見えた。私は駐車場に車を滑り込ませた。

 携帯を手に取り、電話帳から父親の名前を探した。もう1年近く会ってもいないし、話してもいない。最後に顔を見たのは祖母の葬式だったが、私は初盆には呼ばれなかった。

 ディスプレイに番号を表示させ、発信ボタンを押すと呼び出し音が響いた。 5回くらいコールしただろうか。父親が出た。

「もしもし、里織だけど・・・」

『おお、元気にしちょんのか。連絡ねえけん、どげえしちょんのか心配で』 方言丸出しの、変わらない、父親の声。

「うん・・・いろいろあってね」

 心臓の鼓動が早くなる。携帯を持つ手が震え、急激にのどが渇いていくのがわかった。 

 さあ言うぞ、さあ言うぞ、さあ言うぞ。

 心の中で自分に檄を飛ばし、私は口を開いた。

「借金払えなくなった。だから弁護士に整理を依頼した。クレジット会社から電話がかかってきても、娘が弁護士を通しているので、そっちに聞いてくれとそう伝えて」

 そっけないほど早口で私はそう告げた。とてつもなく悪いことをしたような、犯罪者になったような気分だった。きっと怒られるのだろう。

 電話口だからまだいいが、これが面と向かっていたなら張り倒されているな・・・

 縁を切られるかも・・・それもいいかもしれない。 こんな馬鹿が自分の娘だなんて情けなくてしょうがないだろうなぁ・・・・

 何を言われても仕方ない。私は覚悟を決めて次の言葉を待った。

『おまえ・・・』

 来た。私は携帯をぎゅっと握り、目をつぶった。

『・・・ちゃんと食べよんのか?借金払えんくなったち、お前はちゃんと食べよんのか?』


 意外だった。てっきり怒鳴られると思っていた私は、返事をすることを忘れていた。

『お父さんがお前に何かしてやれることはねえか?弁護士に頼んだっちゅうても、破産じゃねえごとあるけん、支払いはするんじゃろ?』

「うん・・・支払いはする」

 重く胸につっかえていたものが、吐き出されていくようだった。呼吸が楽になっていく。それと引き換えに目からは涙が溢れ出した。

『泣かんでいいけん、ちゃんと言え。お父さんは何もせんでいいんか?』

「・・・クレジット会社から電話があったら・・・・」

『わかったけん。弁護士通したっち言えばいいんやな。弁護士費用はどうしたんか。ただじゃあねえやろ』

「・・・もう払った。給料から払った・・・」

『払ったんか、そうか』

 もう言葉にならなかった。泣き声を押し殺しながら、私はもう「うん」としか返事ができずにいた。

『よう話してくれたな。きつかったじゃろう。お前はお父さんに何も言わんけん。信用されちょらんのじゃなあと思っちょった。再婚とかいろいろあったけん、愛想つかされてもしょうがねえとは思っちょったが』

 とめどなくあふれる涙。私はなぜ泣いているんだろう。

 ああ、そうか。

 こんな面倒なことを言ったのに、事実をそのまま受け入れてくれたことが嬉しいんだ。

『お父さんもできる限り協力するけん、一回家に戻って来い。お前が帰ってくりゃばあちゃんも喜ぶ。線香の1本でん仏壇に上げちゃれ(上げなさい)。ゆっくり話して、これからの事を一緒に考えよう』

 しばらく話してから電話を切った。ステアリングに突っ伏して、声を上げて私は泣いた。

―親兄弟に話しなさい。こんな重要なことを黙っているなんて、あなたが親兄弟の立場なら悲しくなりませんか?―

 弁護士の言った言葉の意味がやっとわかった。

 親兄弟に話すことの重要性。 知ってくれる人がいることのありがたさ。それは家族に自分の現状を知らせ、理解を得るだけではなく、自分の心を解きほぐしていくことにもつながる。

 自分が落ち着けば、目測は誤らない。

 間違いのない選択をしっかりすることができる。

 業者からの督促は弁護士が受任した時点で一切止まる。しかし、今度はどこから話がほつれて整理した事実が家族の耳に入るかわからない。

 ビクビクする相手が変わっただけで、Xデーに怯えるうちに精神的に追い詰められていく。

 電話の音、郵便、世間話。ほんとうにどこから事実がもれるかわからない。

 これから整理を考えている人へ、たとえ離れて暮らしていたっていい。親兄弟、身内に言えなかったら恋人にでも打ち明けてみてはどうだろうか。

『一緒に考えよう』と言ってくれる人がいる。

その人の存在が、その一言が、整理をする上で大きく心強いものになって行くのは間違いない。

2004.12.10
椎原里織

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更新:2013.06.06
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