サクラジロウことだま放浪記

全ての答えはことわざの中のある。真理は名言のなかにある。長い時代を生き抜いた言葉には何か不思議な力があるのです。1つのことわざに1つのエピソード。不思議主人公サクラジロウが織りなす言霊の真実。

サクラジロウ

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サクラジロウ自己紹介

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サクラジロウ
ことだま放浪記

19 終わりを始めに慎む
18 良い内から養生
17 不幸は決して単独ではこない
16 灯台下暗し
15 人は見かけによらぬもの
14 恋は思案の外
13 人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し
12 盆を戴きて天を望む
11 年寄りの言う事と牛の鞦(しりがい)は外れない
10 上戸は毒を知らず 下戸は薬を知らず
9 すずめ百まで踊り忘れず
8 禍福はあざなえる縄のごとし(後編)
7 禍福はあざなえる縄のごとし(前編)
6 年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず
5 人間万事、塞翁が馬
4 春眠 暁を覚えず
3 焼け野のキギス夜の鶴

2

虎口を逃れて、竜穴に入る

1

袖すり合うも他生の縁

0

己の欲せざる所は、人に施すことなかれ

第7回

禍福はあざなえる縄のごとし(前編)


 今回は『人間万事塞翁が馬』の続きの物語。
いや、正確に言うと続きではない。
 その前夜に人知れず場末のバーで起こった物語―。

 沖縄にパイプラインという名の通りがある。道の下に大きなパイプが通っていたのが、その名の由来らしい。昔は米軍敷地内で日本人は入れなかった通りだ。サクラジロウはパイプラインを一人歩いていた。
 
 海の沖合から黒いカーテンが近づいてきたと思ったら、突然、大粒の雨が降り始めた。鉛の玉のような雨に打たれハイビスカスが踊る。
南国特有のスコール。
  
 サクラジロウは雨を避けるため、近くにあったバーに飛び込んだ。
バーテンはアメリカ人。店の真中には古い大きなビリヤード台が1台。
カウンターとテーブル席が数個。

 夕方の6時という時間帯のせいだろうか、客足は少ない。
女の子が2人。それぞれ一人で来ているみたいで、カウンターで飲んでいる。
 サクラジロウもカウンターに座り、ジンリッキーを注文する。
ライムではなくレモンが使ってあり酎ハイみたいな味だった。
 アルコールの味はしない。

 しばらくすると、三人の米兵が賑やかに店内に入ってきた。常連らしく一人は持参したキューを持っている。 
 体もでかいが声もでかい。三人はビリヤードをしながら一通り大騒ぎし、それにあきるとカウンターの女の子を口説き始めた。

 一人の女の子は英語を話せるらしく、二人の米兵を相手に楽しく話している。
 もう一人の女の子は英語を解せないらしく、スキンヘッドの米兵は最初、英語で強引に話し掛けていたが、あきらめ、筆談で口説きだした。
 筆談でどういうやり取りをしているのか、サクラジロウの席からは見えなかったが、1時間もすると、二人はもう昔からの付き合いのごとく打ち解けていた。
 
 どうやらこのバーはアメリカ人男性を求める日本人女性と、日本人女性を探しているアメリカ人男性が集まる店であるみたいだった。
 アメリカ人男性でも日本人女性でもないサクラジロウは明らかに浮いていた。

 時間が経つと3人の米兵と2人の日本人女性は合流し、テーブルで騒がしく飲んでいた。
 カウンターにはサクラジロウ一人。
 
 スキンヘッドは相変わらず筆談でやりとりをしている。
 マイキューの男はキューを組み立て、それで女の子をつついている。
 もう一人の赤鼻の米兵はなんとなく一人あぶれたみたいで酒をあおっている。
 
 賑やかな声を背にサクラジロウはジンリッキーを少しずつ飲んでいた。居心地の悪い空気の中、雨のやむのをひたすら待つ。
 こういう時に限って雨はやまない。

 ドリンクの注文にカウンターまで来た赤鼻の米兵が、まるで初めてサクラジロウの存在に気付いたかのごとく声をかけてきた。赤鼻は明らかに酔っていた。

『ボーイ。子供はオウチにかえってママのオッパイでもしゃぶってな!』
 早口の英語でうまく聞き取れなかったが、当たらずとも遠からずのセリフだと思う。サクラジロウにはそう言っているように聞こえた。
 言葉は通じなくとも悪意は伝わってくる。明らかにサクラジロウをからかう響きが言葉と顔に表れていた。

『日本の男は貧弱ヤローばかりだな、女は尻軽でラクショーだしよォ―』
 今度は、はっきり聞き取れた。マスターはサクラジロウと赤鼻のやり取りをニヤニヤしながら聞いている。
 もしかしたらさっきから飲んでいるジンリッキーもわざとアルコールを少なくしているいのかもしれない。
 女の子達は自分たちが尻軽と言われているとも知らず、キャッキャと騒いでいる。

 サクラジロウは腹が立っていた。しかし、その米兵のTシャツからでている隆々たる二の腕を見て、すぐさま萎えた。
 
 君子危うきに近寄らず―という都合のいい言葉がサクラジロウの脳裏をよぎったという。

『何をむっつりだまってるんだフレェンド?オレはオマエと仲良くしたいだけだ。ビリヤードしようぜ―』
 赤鼻のたくらみはすぐに分かった。
 このままだと他の二人に女の子をもっていかれると思ったのだろう。何か巻き返しを考えていたら、そこにたまたま日本人の男がいた。その男をからかって自分に注目をあつめる。サクラジロウはいわば当て馬だった。

 腕力ではかなわないが、ビリヤードならなんとかなるかもしれない。サクラジロウは学生時代からビリヤード場に入り浸っており、回数だけなら、かなりの場数をこなしていた。
サクラジロウは席を立ちかける―。

 しかし、相手はアメリカ人。理由は無いがビリヤードが上手そうだ。
サクラジロウ席に座る―。

周りは敵だらけ。何も相手の都合に合わせて勝負する必要も無い。
それに、ここで負けたら本物の当て馬だ。

(人生では何度か必死で頑張らなきゃいけない時があるんだよ―)
昔、先輩が言っていた言葉をふと思い出した。

 先輩の言葉と、普段は意識しない「大和魂」という言葉がサクラジロウの背中をおしてくれた。
 サクラジロウは席を立ちキューを手にとった。

 こうして人知れず場末のバーで日米ビリヤード対決の幕が静かにあけた。

2002.06.13

サクラジロウ


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更新:2013.06.06
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