サクラジロウことだま放浪記

全ての答えはことわざの中のある。真理は名言のなかにある。長い時代を生き抜いた言葉には何か不思議な力があるのです。1つのことわざに1つのエピソード。不思議主人公サクラジロウが織りなす言霊の真実。

サクラジロウ

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サクラジロウ自己紹介

あなたもライターになれる

 

サクラジロウ
ことだま放浪記

19 終わりを始めに慎む
18 良い内から養生
17 不幸は決して単独ではこない
16 灯台下暗し
15 人は見かけによらぬもの
14 恋は思案の外
13 人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し
12 盆を戴きて天を望む
11 年寄りの言う事と牛の鞦(しりがい)は外れない
10 上戸は毒を知らず 下戸は薬を知らず
9 すずめ百まで踊り忘れず
8 禍福はあざなえる縄のごとし(後編)
7 禍福はあざなえる縄のごとし(前編)
6 年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず
5 人間万事、塞翁が馬
4 春眠 暁を覚えず
3 焼け野のキギス夜の鶴

2

虎口を逃れて、竜穴に入る

1

袖すり合うも他生の縁

0

己の欲せざる所は、人に施すことなかれ

第8回

禍福はあざなえる縄のごとし(後編)


 人知れず場末のバーで日米ビリヤード対決が始まった。


 ゲームはナインボール。9番ボールを落とした方が勝ちという、ビリヤードの中で、もっともポピュラーな遊び方だ。
 ブレイクは赤鼻からだった。
 台の周りには、他の米兵と日本人の女の子。
 女の子達のサクラジロウを見る目は冷ややかだった。

 赤鼻のブレイクショットは強力だった。ボールが割れそうなくらいのパワーで、台が振動した。
 しかし、パワーだけだった。ショット精度に欠け、気付けばサクラジロウのワンサイドゲームで終った。
 赤鼻の顔が紅潮している。
『もう一度・・・』
と言おうとする赤鼻をおさえ、スキンヘッドがでてきた。
『今度は私がお相手をしよう』

 スキンヘッドとのゲームが始まる。
 ゲームは接戦だった。確実に赤鼻より腕は上だった。自分の番では確実に2〜3個のボールをポケットにおとす。

 マイキューの米兵は女の子たちと何やら囁き合い、下品に大笑いしている。
 赤鼻は目論見がはずれたからだろう、テーブルに戻りふてくされている。

 勝負は紙一重だった。9ボールが一つだけ残った時、相手がミスをした。
 正確にいうと、スキンヘッドのミスではない。ビリヤード台にキズがついており、その上をボールが通った時、軌道が変わったのだ。
『オーマイガッ!』
 冷静なスキンヘッドが初めて吼えた。

 彼らの好きな神がサクラジロウを不憫に思って、お目こぼししてくれたのかもしれない。

 サクラジロウは勝った。
 スキンヘッドは無言でビリヤード台を蹴る。
 空気が重い。
 スキンヘッドも、テーブルにもどり酒をあおりはじめる。
 
『オレの番だな』
 マイキューを持っている、いかにもボス風情の米兵がでてきた。

 もう、ビリヤード台を囲んでゲームを見ているのは、二人の女の子だけだった。
 いよいよ決戦という雰囲気が場を覆い、空気がヒリヒリとする。
 女の子達のサクラジロウを見る目が心なしか潤んで見える。

 アメリカにも形から入る人間がいるらしい。ボスはまったくの素人だった。
 空振りをする。ファールをする。たぶん、持参したキューは女の子を口説く為の小道具だったのだろう。
 あけなくサクラジロウは3人抜きをした。
 
 店内が水を打ったように静かになる。
 険悪な雰囲気の中、三人の米兵にサクラジロウは囲まれた。
 勝った後のことをサクラジロウは考えていなかった。


『おまえはスゴイ奴だな』
 赤鼻が握手をもとめてくる。
『カミカゼボーイ』
 スキンヘッドがビールを差し出す。
『サムラーイ』
 ボスが漫画みたいなセリフを言う。

 場がしらけるかと思いきや、米兵三人は突然フレンドリーなった。
 三人抜きしたサクラジロウに握手をもとめ、たたえる。
 あからさまな手のひら返しには少し面食らったが、自分に勝った相手をも手放しで賞賛する、アメリカ人の気質は気持ちよかった。

 それから6人でどんちゃん騒ぎをした。
 カンビールの下の方に鍵で穴を開け、そこに口をつけて、プルトップをひく。すると350mlのビールが一気に口の中に入ってくる。
 否が応でもいっきにビールを飲まなければならない。
ショットガンというビールの一気のやり方を教わった。
 ショットガンの勝負でサクラジロウが勝つと、ボスはまた『サムラ―イ』を連呼する。

 ジンリッキーには、いつのまにかライムがちゃんと入っていた。
 話を聞いてみると米兵たちはサクラジロウよりも年下で、最初の印象とはうって変わって、とても気さくな良いやつらだった。
 思えば若くして祖国を離れ、家族と離れ、恋人と離れ、口には出せぬ色々な苦労を彼らはしてきているのかもしれない。

 最初は敵対しあっていた男たちが、闘いを通じてお互いを理解しあい、打ち解ける。
 映画の王道のような筋書きの一夜だった。
 
 ただ一つ足らないものがある―。
 最初は敵対しあっていた男たちが、闘いを通じてお互いを理解しあい、打ち解ける。
 そして、その後にはヒロインと結ばれハッピーエンド。
 それが王道のパターンであろう。
 ビリヤードでのサクラジロウの雄姿を、女の子達も見ていてくれたはずだ。

 映画のような夜だったが、そこだけは現実的だった。
 米兵3人を相手に引くことなく勇敢に戦った日本男児サクラジロウに、女の子達は見向きもせず、いつのまにか雨のやんだパイプラインへ、米兵に腕をからませ消えていった。 

 ハッピーエンドはそうそう訪れない。

教訓―『禍福はあざなえる縄のごとし』
(人間の幸不幸は、災いが幸いになったり、幸いが災いになったり、ちょうどより合わせた一本の縄のように表裏をなしていて、人知では計りがたいというたとえです)

多謝

2002.06.27

サクラジロウ


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更新:2013.06.06
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