サクラジロウことだま放浪記

全ての答えはことわざの中のある。真理は名言のなかにある。長い時代を生き抜いた言葉には何か不思議な力があるのです。1つのことわざに1つのエピソード。不思議主人公サクラジロウが織りなす言霊の真実。

サクラジロウ

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サクラジロウ自己紹介

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サクラジロウ
ことだま放浪記

19 終わりを始めに慎む
18 良い内から養生
17 不幸は決して単独ではこない
16 灯台下暗し
15 人は見かけによらぬもの
14 恋は思案の外
13 人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し
12 盆を戴きて天を望む
11 年寄りの言う事と牛の鞦(しりがい)は外れない
10 上戸は毒を知らず 下戸は薬を知らず
9 すずめ百まで踊り忘れず
8 禍福はあざなえる縄のごとし(後編)
7 禍福はあざなえる縄のごとし(前編)
6 年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず
5 人間万事、塞翁が馬
4 春眠 暁を覚えず
3 焼け野のキギス夜の鶴

2

虎口を逃れて、竜穴に入る

1

袖すり合うも他生の縁

0

己の欲せざる所は、人に施すことなかれ

第10回

上戸は毒を知らず 下戸は薬を知らず


 バーの止まり木で、二人の男が、つがいの鳥のように飲んでいた。
 一時間前までは、それぞれ違う人生を歩いてきた、見知らぬ二人だった。
 二人が話すようになったきっかけは簡単だった。
 二人ともショートホープを吸っていた。
 サラリーマンはバーボンを口に放り込むように飲んでいた。
顔色は全然変わらない。

 一人で飲んでいるが、まるで昔からそこにあったインテリアのように店になじんでいる。
 イタリア製のスーツを着こなしているが厭味は無い。
 革靴は暗いバーの中でも磨き上げているのがわかる。
 ネクタイさえも緩めていない。
 人当たりがよく、下世話な話題さえも、その人が話すと春風のように清々しい。
 
 ようするにするに非の打ち所が無い、しかしこういうタイプにありがちな、何の仕事をしているか分からないタイプのサラリーマンだ。
 話題も豊富であっというまにサクラジロウはそのサラリーマンに惹きこまれた。

 マジックが得意みたいでサクラジロウの腕時計を彼が両手の中に握り、手を開くと時計は消えていた。
 楽しい人と飲む酒はおいしい。

『時計はどこにいったんですか?』
『帰るときに教えるよ』
 サラリーマンはそう言いタバコをふっとくゆらす。
 紫煙が天井の闇の中に吸い込まれていく。
 その光景さえも彼のマジックのようだ。

 彼の様子が変わったのは夜もだいぶふけてからだった。
サラリーマンのトイレに行く回数が、突然ふえた。それ自体はおかしいことではないが、その間隔が異常だった。席に戻ったと思ったら、トイレにとんぼ返りをする。

 トイレ、席、トイレ、席、トイレ、トイレ・・・。

長いトイレから帰ってくると、サラリーマンに前の面影はなくなっていた。
 髪は乱れ、ネクタイはどこかに消えており、靴は片一方しか履いていなかった。
 何事もなかったようにカウンターに座り、バーボンを飲む。
 バーボンを口に放り込む時、サラリーマンが白目をむいているのをサクラジロウは見逃さなかった。

 ほっておけば良いのだが、乗りかかった船という気もし、それに何より腕時計を返してもらっていない。
 
 サクラジロウはサラリーマンに聞いた。

『もうそろそろ帰りますか・・・』
『ヤダ』
『これを飲んだらもうそろそろ・・』
『ヤダ』
『じゃもう朝まで飲みましょうか』
『ヤダ』
『じゃあ帰り・・・』
『ヤダ』
不毛な会話が繰り返す。

なんとかバーを出て帰途につこうとすると、サラリーマンは光にすいよせられる虫のようにコンビニに入っていった。
 コンビニで袋に入ったままのおにぎりをかじる。
 支払も済まさず缶ジュースを飲み始める。
 得意のマジックでガムを消す。
 レジに倒れ込み店員にあまえるなどのパフォーマンスを繰り広げる。
 他の客の射るような視線を背中に受けつつコンビニをでた。
 サクラジロウは別れるタイミングを逃していた。

 彼のホテルへ帰る道すがら、水商売帰りの女と擦れ違う。
ふとサラリーマンの顔をのぞき見ると、その女をみるサラリーマンの目は、殺し屋が獲物を見るような光りを帯びていた。

(オレは大丈夫だ体はボロボロだが、まだ目は死んじゃいねぇ。オレをおいていけ!)

 サラリーマンは無言でそう言っているのだと勝手に解釈した。
 サクラジロウは安心して家路についた。
 すっかり忘れていたのだが、なぜかサクラジロウのポケットから腕時計はでてきた。
 彼は本当のマジシャンだったのだろうか。
いつのまにか空は白み始めていた。

教訓―『上戸は毒を知らず 下戸は薬を知らず』
(酒飲みは酒が毒になる事を知らずに飲みすぎ、逆に酒の飲めない人は酒が薬になることを知らずに全然飲まないでいるという皮肉)

多謝

2002.07.26

サクラジロウ


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更新:2013.06.06
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