雑文の女王 -沢木まひろ-

目指すはメルマガ界の『天声人語』。「あるあるある!」「おー、いいこと言うじゃん」「うまいっ!」と毎週うなずいていただきます。読みやすく、かつきれいな日本語を大切にする、沢木まひろの週刊コラムです。

沢木まひろ

現代メロンパン考

日々つれづれ思ふ事

読むドラマ

雑文の女王


沢木まひろ自己紹介

あなたもライターになれる

 

雑文の女王

発行履歴

15

それはまた別の話

14

価値観

13

頼れる人

12

アタマも風邪をひく。

11

背番号

10

親心

9

あなたは1人だけ。

8

年の始めに。

7

レッツ・ショッピング

6

得意分野

5

ものを大事に

4

失神したい?

3

それでも花嫁は泣く。

2

脱ぐ女

1

背徳の食卓

0

決めゼリフ

第1回

背徳の食卓


運動することは身体にいい。そして、運動すれば気分もいい。私のようなスポーツ音痴でも、たまに動いて汗をかくと、いいもんだなとは思う。ただ、他に「いいもんだな」と思うことがたくさんありすぎて、なかなかスポーツまでまわらないのは困ったもんである。

身体にいいこと=気持がいい。これはたしかに言えることだ。だが、実は身体に悪いことも、意外と気持よかったりする。

お酒やタバコの好きなかたは、上の理論を身にしみてお感じになるはずだ。お酒の害はまだ量によるけど、タバコは1本だけでもいいことはひとつもない。でも皆さん、なかなか禁煙できない。なぜか。タバコは美味しいからだ。吸うと気分がリフレッシュされるからだ。

食べ物だってそうです。身体に悪いものは、えてして旨い。

先日、新聞をながめていて、思わず「おっ。懐かしー」と声が出た。『世界の料理ショー』に出演していた、グラハム・カー氏についての記事が載っていたのである。

ご存じですか、『世界の料理ショー』。ホスト役のグラハム・カーが、グラスワインを片手に軽妙なトークを交えながら、華麗な包丁さばきを披露する料理番組。かつて38か国で放映された、大人気プログラムである。

たしか日曜の午前中、わりと遅めの時間帯に放送していたと思う。さしあたって何をする必要もない休日の朝に、のんびりと観るには最適の内容だった。客入れ方式なので、カー氏がジョークをとばすたび、観客の爆笑がきこえるのも楽しかったし、料理しながら酒を飲んでるという、日本の板前サンではありえない、不謹慎な感じもちょっとよかった。

完成した料理を自ら試食するカー氏の至福の表情とともに、客席にいる人たちの、何ともうらやましそうな顔も映し出される。最後にキメのジョークの後、幸運な1人の客が選ばれて料理を食べることができるのだが、青い瞳の可愛らしいおばあちゃんが、しっかり味に注文をつけたりするところも、よくわかんないけどアメリカンな感じで楽しかった。

で、この料理ってのが、毎回すごいのだ。健康を気にしようなんて考えは皆無。バターどっさり、ワインドボドボ、とにかく「美味しければいい」、それだけを念頭においてカー氏は料理を作っていた。高級な食材をふんだんに使いつつ、「おい、そんなにニラむなよ、スティーヴ(プロデューサーの名前)」とか何とか言ってたが、豪快な贅沢を"観る"という楽しみ方も、高度成長も終末に近づいたころの日本にマッチしていたのかもしれない。

そんなだったグラハム・カーさんが今、癌予防のための野菜や果物のメニューをたずさえ、脂肪たっぷりの肉中心の食生活からの脱出を説いて全米を飛び回っているというのである。『世界の〜』当時のマシンガントークは健在で、講演会は大盛況。休憩時間のサイン会には、数百人の列ができるんだとか。

180度方向転換のきっかけは奥さんの糖尿病だったらしいけど、ヘルスコンシャスの時代とはいえ、人間変われば変わるものである。「食べる楽しみは放棄しない」「グルメライフと科学は同居できる」ということだが、カー氏の典型的な1日のメニューというのを見て、私はいささか寂しくなった。

朝はドライフルーツやナッツ入りのオートミールに、ローファットミルクに紅茶。ランチは野菜サラダか野菜スープ。夕ご飯は蒸すか焼くかした100gの肉料理と最低3種類の野菜料理、デザートに果物とヨーグルト。

…夜中に目、覚めたりしないのかな。

食事制限が必要な人のために、こういうメニューが開発されること自体は、もちろんすばらしいと思う。食べれば美味しいんだろうし、空腹感に苛まれぬように工夫もしてあるのだろう。だけどだけど、やっぱりちょっと情けなくない? ことに私は生野菜ぎらいなので、夏場の昼御飯がサラダだけというのは、何とも耐え難い。

生活にはメリハリが必要である。たしかにカー氏がかつて作ってたようなご馳走を毎日のように食べてたら、ヤバイのは明白。たまの"不健康"は思いきり楽しめる身体を、普段から気をつけて保持しておきたいものである。

ちなみに『世界の料理ショー』の原題は『the galloping gourmet』。うーん、たしかに身体に脂肪がつきまくりじゃ、ギャロップはできないもんね。それに"galloping"って、病気などが急速に進むって意もあるらしい。その後の展開を考えるとこのタイトル、何か意味深長なんである。

2002.11.15
 
沢木まひろ

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更新:2008.11.20
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