雑文の女王 -沢木まひろ-

目指すはメルマガ界の『天声人語』。「あるあるある!」「おー、いいこと言うじゃん」「うまいっ!」と毎週うなずいていただきます。読みやすく、かつきれいな日本語を大切にする、沢木まひろの週刊コラムです。

沢木まひろ

現代メロンパン考

日々つれづれ思ふ事

読むドラマ

雑文の女王


沢木まひろ自己紹介

あなたもライターになれる

 

雑文の女王

発行履歴

15

それはまた別の話

14

価値観

13

頼れる人

12

アタマも風邪をひく。

11

背番号

10

親心

9

あなたは1人だけ。

8

年の始めに。

7

レッツ・ショッピング

6

得意分野

5

ものを大事に

4

失神したい?

3

それでも花嫁は泣く。

2

脱ぐ女

1

背徳の食卓

0

決めゼリフ

第3回

それでも花嫁は泣く。


費用5億円(推定)。列席招待客数600人。会場は新高輪プリンスホテル『飛天の間』。11月22日、"いい夫婦の日"にTBS系で中継された、小室哲哉とKEIKOの結婚披露宴である。高円宮様の薨御をうけてやや自粛気味ではあったそうだが、それでもまさに華燭の典と呼ぶにふさわしい豪華さだった。

地味婚という言葉が流行ったのは随分前のこと。今はもう、結婚にやたらなお金をかけるほうが珍しいかもしれない。長者番付に載る芸能人だって、マスコミへのFAXやホームページで入籍発表して済ませちゃう今、何でまたこんなド派手に? と疑問をもったまま、テレビ画面をながめていた。

放送開始時間の都合から、最初のほうだけ録画で、あとは生中継に切り替わった。会場脇のレセプション・ルームに局アナがひかえていて、何人か招待客を引っ張ってきて話をするのだが、そんな中、招待状を持っていない峰竜太が、なぜかタキシードを着て宴会料理を試食していたりして可笑しかった。この料理は小室氏のユニットglobeの曲名にちなんだ品々ということ。本気で美味しかったらしく、会場担当の女子アナにマイクを向けられた客が、みな一様に口をモグモグさせて、不意打ちインタビューに戸惑っていたのもまた可笑しかった。

そんなこんなしてる間に、花嫁のKEIKOサンは何度かお色直しを済ませている。純白のウエディングドレスは、新郎新婦の友人であるパリの有名デザイナーの作品だとか。これだけで一般ピープルの結婚式が数回できるかもしれない。何たって5億(推定)だもん。そりゃあお客さんも食べなきゃ損だ。こんな凄い宴席に招かれた日には、ご祝儀の額もちょっとやそっとでは済むまい。

ベテランアナウンサー・露木さんの司会で、両人の生い立ちや業界での軌跡、そしてなれそめから結婚に至るまでのエピソードなどが(前の恋愛や華原●美などは、当然すべてすっ飛ばして)、VTRで流される。このあたりの微笑ましさ、というかこっ恥ずかしさは、一般の披露宴とまったく変わらない。

だいたい、結婚式とか披露宴って、よく考えると恥ずかしいものである。私も一応経験済みだけれど、親にお金出してもらっておいてこんなこと言うのもなんだけれど、今振り返ってみると何か物凄く恥ずかしい。やらなきゃよかったとさえ思うこともある。だけど、当時は是非ともやりたい、ああしたい、こうしたいと思っていた。何しろ、一生に一度のことなのだから。

一生に一度。そう、結婚式を行うにあたってしばしば出てくるのがこのキーワード。とくに口にする頻度が多いのは、綺麗な服を沢山着たい新婦とその母親、そして宴会係かもしれない。当初はそんなにお金をかけるつもりじゃなくとも、いざドレスを選ぶ段になると、ステキさと値段とは美しく比例している。すると頭の中は「一生に一度」でいっぱいになる。実際は「一生に一度」じゃないかもしれないのに、とにかくその時は「一度」と思うわけだ。テーブルの花しかり、お料理しかり、かくして予算はどんどんオーバーしてゆくことになる。

小室氏も、たしか前回の結婚は地味に入籍発表だけで済ませていたはず。今さらこんなバブリーな、ある意味失笑ものの豪華披露宴を行うのは、引くに引けない状況を自分に課し、今度こそほんものの愛を成就させんとする決心の表れなのかもしれない。

もっとも会場の600人とやらは、義理で出席してた人がほとんどであろう。「自分も2、3年内にはどこかのチームの監督になっているから、お子さんと観戦に来て下さい」などというラモス瑠偉氏のスピーチは、お祝いの言葉というよりは、全国放送を意識してのアピールだったとしか思えない。まあ、義理と虚栄が渦巻いていることに関しては、一般の披露宴も似たようなものかもしれないが。

やがて南こうせつが出てきて、『妹よ』を歌った。ご存じ、嫁入り前夜の妹への、兄の思いを歌った名曲。KEIKOのリクエストということだったが、歌う前にこうせつさんが「いいんですか?」と確認していた。聴いてみて、思いだした。歌詞がなかなかビミョーなんだった。

♪…どうしても、どうしてもだめだったら、帰っておいで妹よ♪

でもそんな中で、花嫁は終始とても嬉しそうだった。もうちょっと気取ってもいいのにと思うほど、あけっぴろげな笑顔で友人に手を振り、分厚いマスカラをものともせず涙を流す。今はほんとに前後の見境もなく幸せなんだなと思ったら、妙に心がなごんだ。結局のところ結婚式なんて、地味でも派手でも本人たちがいいと思うのが一番なのである。

「何だかなあ」と思いつつながめていた私も、最終的にはご両人の末永い幸せを祈る次第であった。番組の冒頭での俳優・寺脇康文氏の、「ちゃんとして下さい」という、ちょっと皮肉なメッセージが逆に誠実な言葉に聞こえたのは、きっと私だけではないと思う。

翌日に友人からきいた話だが、今回の披露宴中継の陰には、小室氏の経済的な問題があったんだとか。5億円かけたとしても、局から支払われる放送権とご祝儀とで、十分お釣りがくるらしい。ということは、人によっては数百万包んでるということか。そんなに入る祝儀袋って。ご祝儀専用振込口座とかあったりして…と、いろいろ想像してしまったことであった。ちょっとがっかり?

2002.11.29

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更新:2008.11.20
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