雑文の女王 -沢木まひろ-

目指すはメルマガ界の『天声人語』。「あるあるある!」「おー、いいこと言うじゃん」「うまいっ!」と毎週うなずいていただきます。読みやすく、かつきれいな日本語を大切にする、沢木まひろの週刊コラムです。

沢木まひろ

現代メロンパン考

日々つれづれ思ふ事

読むドラマ

雑文の女王


沢木まひろ自己紹介

あなたもライターになれる

 

雑文の女王

発行履歴

15

それはまた別の話

14

価値観

13

頼れる人

12

アタマも風邪をひく。

11

背番号

10

親心

9

あなたは1人だけ。

8

年の始めに。

7

レッツ・ショッピング

6

得意分野

5

ものを大事に

4

失神したい?

3

それでも花嫁は泣く。

2

脱ぐ女

1

背徳の食卓

0

決めゼリフ

第10回

親心


「ピッカピカの1年生」のCMが流れている。ついこのあいだ年が明けたと思っていたら、もう新学期の準備か。デパートの売場にも、ピッカピカのランドセルが並んでいる。

最近のランドセルはハンパでなく色の選択肢が増えているようだが、そのわりには街で変わった色のを見かけたことがない。何だかんだ言ってても、やはり無難に男は黒、女は赤に落ち着くのかしらん。そんなことを考えていたら、ある新聞の投書が目についた。

その女の人は、自分が小学生になった時、赤いランドセルがイヤだと思った。お父さんに相談すると、お父さんは「そうか」の一言で認めてくれ、他の色に決めたという。個性は周囲にも受け容れられ、彼女は楽しい小学校時代を過ごすことができた。

時が経ち、彼女の娘が小学生になった。色とりどりのランドセルの中から、娘さんは"黄色"を選んだそうなのだが、最終的にその希望はかなえられなかった。わざわざ変わった色のランドセルで学校へ行って、もしいじめられたりしたら? という不安を、母親である彼女が、どうしても拭いきれなかったからである。

娘さんは、みんなと同じ赤いランドセルで、6年間元気に小学校に通った。でも卒業を前にしたある日、「やっぱり黄色いランドセルで行きたかった」と呟いた。父は静かに認めてくれたのに、自分は親のエゴを押しつけてしまった。娘の意志を尊重しなかったことを、彼女は今、ひどく後悔しているというのだ。

なかなかいいお母さんだと思った。たしかに、6年間不本意な色を背負いつづけた子供は気の毒ではあるが、親の気持もよくわかる。世間を知らないうちって失敗を怖れないというか、そもそも失敗の後のことなど考えないけれど、年をとってくるとそうもいかない。つい「やめときなさい」と言いたくなるんだと思う。

冒険させまいとするお節介の裏には、我が子にはだれよりも幸せであってほしい、親としてごく当然の気持がある。ただ、自分自身も後悔したくないという、まさに親のエゴも含まれている。このへんが非常に微妙である。

過保護になるか、放任主義に傾くか。それは親の性格によりけりで、その親のやりかたが子供に合うか否かも、結局は運なのではないか。手をかけたからこそ正しい道を歩む子もいれば、放っとかれたのが幸いして強くなる子もいる。さらに個性が勝っている子供だったら、だれがどうしようと我が道を行くだろう。そう考えると、親が影響を与えられる範囲なんて、案外知れているのかもしれない。

先日、友人が「妙に感動してしまった」と言っていた。彼女は一人娘で、どちらかと言えば過保護に育てられたほうという。それなりにまっとうな人生を歩んではいるが、ご母堂は「神経質に育てすぎた」と後悔しておられる。自分の教育のせいで、いちいちものにつまずきやすい人間にしてしまったのではないか、と。

実際にしょっちゅうつまずいている彼女は、親をはじめ周囲の人間に心配をかけることが多い。そういう自分が許せないでさらに落ち込んだりする、まったく厄介な性格である。しかしある日、彼女が「親不孝でごめん」と謝ると、お母さまは笑ってこうおっしゃったというのだ。

「親不孝だなんて。私にとっては、あなたがそこにいるってだけで親孝行なんだから」

私も感動した。これぞ真の親心、エゴのカケラもない親心だ。思いはまたランドセルへと帰着する。私のランドセルは赤だったが、小4で転入した私立は、男子も女子も黒という決まりだった。買い替えることも考えたけれど、結局専門家に頼んで黒に染めかえた。ものを大切に使わせたいという、両親の考えだったのだろうと思う。

2003.01.25

【関連記事】
常識ぽてち[1169]ランドセル
母子家庭・だからどーした?[19]ランドセル
 
沢木まひろ

スポンサード リンク

※記述が古い場合があります、自己責任でご使用ください。

雑文の女王


 

たまごや

知って得する労働法

週刊マナー美人

常識ぽてち

女性のためのクルマ読本

週刊節税美人

四柱推命による人生相談

お店で買うにはちと恥ずかしい


創刊:2002.11.08
訪問者数:
更新:2008.11.20
デジタルたまごやトップ