雑文の女王 -沢木まひろ-

目指すはメルマガ界の『天声人語』。「あるあるある!」「おー、いいこと言うじゃん」「うまいっ!」と毎週うなずいていただきます。読みやすく、かつきれいな日本語を大切にする、沢木まひろの週刊コラムです。

沢木まひろ

現代メロンパン考

日々つれづれ思ふ事

読むドラマ

雑文の女王


沢木まひろ自己紹介

あなたもライターになれる

 

雑文の女王

発行履歴

15

それはまた別の話

14

価値観

13

頼れる人

12

アタマも風邪をひく。

11

背番号

10

親心

9

あなたは1人だけ。

8

年の始めに。

7

レッツ・ショッピング

6

得意分野

5

ものを大事に

4

失神したい?

3

それでも花嫁は泣く。

2

脱ぐ女

1

背徳の食卓

0

決めゼリフ

第12回

アタマも風邪をひく。


「妙な夢をみた」と、友人がその内容を話してくれた。

彼はなぜか服を着たまま、池の中を泳いでいる。水がひどく汚れていて気持が悪い。そして、これがいかにも夢なのだが、泳ぎながらノートパソコンを持っている。持っていること自体がヘンなのに、「濡らしたらヤバイ」という考えだけはまともに働いていて、一生懸命、両手で水の上に抱え上げるようにしている。

そのうち彼は、パソコンに差していたはずのモバイルカードが無いことに気づいた。不自由な姿勢のまま、濁った水の中を透かし見てみると、同じようなカードが何枚も何枚も浮かんでいる。あわててそれらを片っ端から差し込んで試すのだが、ひとつとして合致してくれず、ひたすら焦る…そんな夢だったという。

聞いた私は思わず笑ってしまったのだけれど、最近また「自己紹介で名刺を出そうとするが、出てくるのはなぜか他人の名刺ばかり」という夢をみたらしい。のんびりマイペースで仕事をしているかのように見える彼だが、実は心に重荷があるのではないかと、すこし気にかかった。

ここのところ新聞などで、うつ病など心療内科系の病に関する記事をよく目にする。

投書欄で特集を組めば沢山の意見が寄せられるようだし、製薬会社が「治験にご参加下さい」ということで募集広告を出していたりもする。渦中の患者さんに応募する気力があるのかどうかは疑問だが、そうやってオープンにしていこうという姿勢は悪くない。ちゃんと薬をのんでいればやがて治るという点では、風邪もうつも同じ身体の病気なのである。

とはいえ、世間的にはまだまだ、心の病は他の病気と同じようには認識されにくいようだ。へたをすると「ゼイタク病」などととられがちである。たしかに、死んでしまうしかないような逆境におかれても強い精神状態を保てる人は多く存在するわけで、そういう人々にとっては、心の病は理解しがたいものなのかもしれない。

10代のいわゆる思春期だったころ、こんな私も情緒不安定な状態に陥ったことがある。今から思えばだれもが通る道だったのだが、両親はとても心配して、ある心療内科へ連れていってくれた。

診察室でどんなことをしゃべったのかは、昔のことで憶えていない。ただひとつ、いやでも残っているのは、あの医師が言った、「キミのは病気じゃないよ」というひとことである。

もちろん私は病気ではなかったし、「病気です」と言い渡されたら、それはそれでショックだったと思うのだが、とにかくその言葉1つで、私は相手に対する信頼をなくしてしまった。まるで「お前のはゼータク病なんだから、医学では治しようがない」というふうにもとれるではないか。電車を乗り継いで出かけていったあげく、私がますます落ち込んだのは言うまでもない。

昨年末まで放送されていたドラマで、俳優の竹野内豊が精神科医を演じていた作品があった。毎回、あまりに簡単に話が解決するのはどうかと思ったけれど、竹野内の芝居はなかなか素晴らしかった。

否定しない。励まさない。ただ静かに患者の話を、まるでスポンジが水を吸い取るかのように気長に聞き、適切なアドヴァイスをする。あまりにも美形なのはリアルじゃないが、人の心をあつかう医者としての基本姿勢はリアルだった。

私はたまたま運が悪かっただけで、ああいう真摯なお医者さまも、ちゃんとたくさんいるのだろうと思う。決して病気ではないけれど、少し心の疲れた"予備軍"みたいな人々にも対応してくれるような、そういう医師が増えてくれると良い。何でも世の中のせいにすべきではないが、どうやらみんなの人生は、どんどん複雑でやりづらくなっていきそうである。

2003.02.06
 
沢木まひろ

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更新:2008.11.20
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