私が出逢った男たち3 -緑川すずめ-

出逢いは偶然のように訪れるけれど、振り返ってみるとそれも運命かもしれないと感じる事があります。日本人。アジア人。白人。黒人。過去に出逢った印象的な男たちを日本のオンナ「緑川すずめ」が語ります。

私が出逢った男たち

私が出逢った男たちPart1
by 乾京子
私が出逢った男たちPart2
by 卯月あみか
私が出逢った男たちPart3
by 緑川すずめ

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第20回

アラン


スマトラ沖で起こった地震の津波であの地域がすごい事になっている。連日ニュースで報道される被害の様子は深刻さを増すばかりだ。

被害に遭った住人や旅行者には本当に気の毒で言葉が無い。私の知人にも何人か、被災しながらも無事に帰って来れた日本人もいるし、向こうに住んでいる友人も連絡をくれて無事である事がわかった。でもその中で一人気になるタイ人男性の存在がある。アランという名前の青年だ。タイで知り合った。

彼はガイドの仕事をしていて、英語を上手に、日本語は英語ほどではないけどきれいに話す。独学でそこまで勉強したと言うから感心する。彼とはプーケットのスーパーで知り合った。私は旅行をする時はなるべくそこに住んでいる人になりきりたい傾向があって、たとえ数日や数週間の滞在でも観光名所は無理に回らず、かわりに普通の市民が行くようなところへ足を運ぶ。

服装も誰かが"タイに行く日本人はジーンズにノースリーブやTシャツの人が多いので、目立つ。タイ人はそんなカジュアルな格好はしない。"と言っていたので、私は日本で夏に会社に行くときに着るようなスカートや薄手のカーディガンを着て毎日出歩いていた。タイの女の子は仏教徒が多い為かあまり肌を露出しない。その代わりに彼女達の体の細さを強調させるような格好を好む。ロングスカートやカッターシャツを着ていても縦に長く横がとても細い。肌は見せないけれど体のラインは見せているわけだ。それがまた細くて似合う。そしてどんなにおしゃれな今時風の女の子でも、街中にある仏像の前を通りすぎる時は立ち止まって軽く会釈をして手を合わせたりする。その姿もまた奥ゆかしくて美しい。

私がOLさんのような格好をし、大衆的なスーパーでパンを選んでいたから、そこに居て同じように買い物をしていたアランは私を現地の住人だと思ってタイ語で話し掛けてきた。私はタイ語は数字の1すら分からない状態だ。言葉もわからない外人のくせに一人で普通に買い物をしている。その事が彼の興味を引いた。

彼と知り合いになり、一緒に食事に行ったり、買い物に付合ってもらったりしてお世話になった。日本では考えられない事だけどタイ語を話すとレストランで食事するのにも値段が違う。彼が居るおかげで安く食べられるのだ。お礼の意味も込めて食事代はだいたい私が払った。でも二軒目の酒場などでは彼がさっさと払ってしまう。その時の彼の月給は日本円にして数万円程度だった。大げさに言うと私と10倍違う。私は二人で食べたお金は全部自分が払っても良いと思っていたけど、その辺は彼にも立場と言うものがあるのだろうと、好意を受けておいた。

私は彼に散々お世話になっておきながら、どこかに警戒心も残ったままだった。
タイで痛い目にあった日本人の話しを嫌と言うくらい聞いていたので、他の国に行くより、全てを執拗に疑っていた。

"後でガイド代を請求されるかもしれない。ガラクタ同然の宝石を売ったりする仲間のところへ連れていかれるのかもしれない。本当はジゴロなのかも。"と。

彼は最初に会った時から、明るく良い人で、外見は背はそんなに高くなくて体も華奢だけど整った顔立ちをしていた。いつもニコニコしていて、路上で地図を持って立ち止まっている外国人がいればすぐに話し掛けるような善人だ。

私がタイを去る日に彼は仕事の関係で空港に来る用事があったので、空港で会う約束をしていた。最後にテレフォンカードをあげようと思っていた。国際電話用が300バーツで国内用が100バーツ。彼の為に用意した、と言えばかっこいいかもしれないけれど、自分用に買っておきながら結局使わなかった物だ。でも搭乗ぎりぎりまで待っても、彼は来なかった。電話しても全然つながらず、後ろ髪を引かれる思いで飛行機に乗った。

日本に戻ってから彼に電話をすると、あの日はホテルで待ち合わせをしていたお客さんが戻ってこず、すごく大変だった、携帯もいろんな所に電話していたのでバッテリーが無くなってしまったのだ、と言った。

結局、彼は誠実な良識のある人だった。
その事が、彼と離れて日本に帰って一人になって思い知らされた。

私は彼にタイに居る間告白をされた。でもずっととぼけていた。それにはいろんな理由がある。でも今となっては私がご飯をご馳走するだけでは、埋められない事をしてしまったような気がした。

そんな私がいまさら、彼に電話をして、"津波は大丈夫だった?"と聞けるだろうか。それはあまりにも白々しい感じがする。彼はもちろん(電話を取ったなら)"大丈夫だ、ありがとう。"と答えるだろう。でも、実際に大変な事はニュースで明らかだ。死んだ人も家を失った人もたくさんいて、そして何より、観光地である現地には職を無くした人が大勢いる。職業安定所のようなところは連日長蛇の列だと聞いている。そこへ、"大丈夫?"と聞くのは、本当の恋人や家族や友人ならまだしも、私がしたのでは押し付けがましい無用な電話のような気がする。

それよりは見えないところで寄付をしたほうがよっぽど人情味があるだろう。

*******
被災地が1日も早く正常な生活に戻れる事をお祈りしています。

長くなりました。ご講読ありがとうございます。

2005.01.20


緑川すずめ
 



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更新:2011.02.16
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