疥癬

老人ホームの裏事情PART2

老人ホームのイメージとは?和気藹々な老人たち。暗い病院のような所。夜な夜な徘徊するイメージ。じつは老人ホームにはこんな実体があるんです。有料老人ホームで働く筆者が語る老人ホームのさまざまな裏事情。

超高齢化社会コラム
老人ホームの裏事情Part5
〜学校では教えない本当の社会福祉〜new3.gif (112 バイト)
by エル・ドマドール
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by 稲垣尚美
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老人ホームの裏事情Part2
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老人ホームの裏事情
by 稲垣尚美
 
永礼盟のコラム
永礼盟自己紹介

50号〜最新号
49 リーダー
48 帰ってくる人
47 スターバックス
46 新たな問題
45 新しい風
44 婆ちゃん
43 集団感染
42 新年
41 ピアノ2
40 ピアノ
39 スウェーデンの人
38 四角形2
37 四角形1
36 いなくなる人
35 冬の始まり
34 17歳のカルテ
33 夜勤
32 ヘルパーまでの道のり(4)
31 ヘルパーまでの道のり(3)
30 老人ホーム
29 経管胃ろう(4)
28 経管胃ろう(3)
27 経管胃ろう(2)
26 納涼祭
25 経管胃ろう
24 死〜憂鬱と決意〜
23 踊る大捜査線
22 流れる麺
21 七夕
20 ヘルパーまでの道のり(2)
19 脳梗塞
18 スタッフを困らせるYさん(5)
17 スタッフを困らせるYさん(4)
16 お茶
15 ヘルパーまでの道のり
14 iさん
13 新しい人
12 疥癬(4)
11 疥癬(3)
10 疥癬(2)
9 疥癬
8 幻覚その2
7 幻覚その1
6 スタッフを困らせるYさん(3)
5 忘れる人
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2 スタッフを困らせるYさん(2)
1 スタッフを困らせるYさん

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50号〜最新号
老人ホームの裏事情PART1

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最終更新日:2009.01.23

創刊2003.02.12

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第9回

疥癬

こんにちわ。永礼盟です。いつも購読していただきありがとうございます。お便りをくれた方、推薦文を書いてくれた方、とても励みになっております。まだまだ駆け出しの介護ヘルパーですが、どうぞ宜しくお願いします。

数日して、吉川様が退院されました。幻覚騒動やら、救急対応やら、ドタバタしていましたが、無事に帰ホームされれたことにホッと胸をなで下ろしました。夜勤スタッフは、まだ色々な物が見えてしまう吉川様に、覚悟を新たにした様子が見受けられました。夜は、幻覚に悩む吉川様のナースコールと闘う為です。勿論ナースコールをするのは、吉川様だけではないので、少し重そうな表情が印象的でした。

しかし、悪夢は、いつの間にか舞い降りて、根深くそこに住み始めていたのでした。悪夢は、始まります。

それは、猛烈な痒みを伴い、体に寄生するヒゼンダニと言う虫でした。疥癬です。近年、また増えつつある皮膚病で、きっとこの仕事をしなければ、疥癬と言う言葉に無縁だったと思うし、それを体験することなどなかったと思います。疥癬の症状は、猛烈な痒みと体中に出来る湿疹です。人の肌から肌へ感染する感染症なので、対策が必要になってきます。まず、疥癬に感染している方を隔離します。この人と接するときは、体を包む物着て、なるべく肌の露出を避けなくてはなりません。我々のホームは、病院ではありません。俗に言うケアハウスと呼ばれる物です。病院で行う疥癬対応と同じ事が出来るか?と言われると、それはなかなか難しい事でした。

吉川様は、痒みを訴えていましたが、表だって、疥癬の湿疹が見られなかった為、疥癬発見に少し時間がかかりました。自立されている方なので、体を直接見る機会がありませんでした。唯一体を見られる機会は入浴でしたが、退院後は、様子を見るという理由で、しばらく入浴を避けていたのも発見が遅れた理由の一つです。

入浴係から、吉川様の体に湿疹が出ている事を告げられ、ホームのドクターから、皮膚科受診の指示が来ます。疥癬検査のため、皮膚科に受診します。しかし、検査結果は、マイナス。疥癬に感染している疑いはないとの診断。軟膏を処方され、痒みの部分に塗るよう指示されました。ホーム全体が、ホッと胸をなで下ろしたのを覚えています。

その後、吉川様と接すると、相変わらず魚や、ドクロが見えると訴えられますが、なるべくお部屋にお伺いして、お話を聞くように勤めました。幻覚が見える人には、その幻覚を否定してはいけないと習いました。ヘルパー二級の講座でも習ったし、今のホームの教えでもそう習いました。しかし、吉川様は、それが幻覚だと、家族の方に窘められていたらしく、「幻覚だという事は、分かるんだけど、見えてしまう物は仕方がないじゃない。」そんな訴えを、お聞きするために、部屋に足を運びました。「吉川さん。今日の魚はなんですか?」そう言うと、「今日はボラ。大群が押し入れから押し寄せてくるわ。今も貴方の顔の側を泳いでいる。」私の顔を指さして、そう訴えられるので、そのボラをつまんで食べる素振りを見せてみました。「イヤだぁ!駄目よ。生では食べられないわ!」「食べちゃいました」そんな会話を真剣にしていました。吉川様は、痴呆はありません。薬の副作用で、幻覚が見えてしまうだけです。私が出来ることは、見えてしまうことの負担を、話を聞くことで発散させる事だけでした。しばらくすると吉川様が、卒倒していらっしゃいます。私の顔を指さして、「あな、あな、貴方の鼻からさっき食べたボラが、秋刀魚になって出てきたわ!」と、目を丸くして驚いていらっしゃいます。驚いたのは、本当は、私の方ですが。

しかし、そんな会話を数日続けてみると、ある日ドクロが手を振って部屋から出ていった。と教えてくれました。それ以来、お魚ちゃんもあまり来なくて、部屋が静かになったわとおっしゃっていました。早番だったある日、吉川様の顔色が、とても良い事を、本人にお伝えすると、「昨日はよく眠ることが出来たの。」嬉しそうに語って下さいました。それから、段々吉川様の具合が良くなり、お部屋で食事されていたのに、食堂に出てこられるまで回復しました。体調が、回復すると共に、我々に対する厳しい指摘も復活されたようで、食事の味や、堅さ、盛りつけ、スタッフの動き、御入居様に対する配慮。食堂で、大きな声で駄目出しされるその姿に、スタッフ一同『元気になられたね』と言う表情を浮かべていました。言葉にはない、顔の表情が伝える仕事中のテレパシーみたいな会話です。少し苦笑いをしながら私も、表情で返しました。

一本の電話が鳴りました。その電話をとった人の顔が曇ります。「ええ。はい。」相手の話を、複雑な面もちで聞き入っていました。御入居様が風邪で入院されている病院からでした。そこにいた全員が息をのみ、その人を見守りました。電話を切ると、重たい口調で内容を語り始めます。「M様から、疥癬の卵が発見された」と。

2003.04.18


永礼盟

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