スタッフを困らせるYさん(5)〜カンファレンス〜

老人ホームの裏事情PART2

老人ホームのイメージとは?和気藹々な老人たち。暗い病院のような所。夜な夜な徘徊するイメージ。じつは老人ホームにはこんな実体があるんです。有料老人ホームで働く筆者が語る老人ホームのさまざまな裏事情。

超高齢化社会コラム
老人ホームの裏事情Part5
〜学校では教えない本当の社会福祉〜new3.gif (112 バイト)
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25 経管胃ろう
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22 流れる麺
21 七夕
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15 ヘルパーまでの道のり
14 iさん
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最終更新日:2009.01.23

創刊2003.02.12

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第18回

スタッフを困らせるYさん(5)〜カンファレンス〜

こんにちわ、永礼盟です。ご購読ありがとうございます。

ホーム内の備品を壊されていることと、現在までの行動の経過を会社へ報告すると、カンファレンスを命じられました。Yさんの行動、Yさんからのリサーチ、職員の考え、今後の対応。これらを、会社の上の人間を交えて話し合うことになりました。

事実として上がったことは、
  1. お茶を何十杯も飲むと言うこと。カロリー制限で、他の物は飲めないが、お茶ならいいだろうと、職員の動きを止めるほどのお茶の要求。
  2. トイレに行きたいと訴えられるが、トイレで排泄はなく、ベッドに戻ってからパンツを脱いで排尿される。(その際、俺の勝ちだと言う言動)
  3. ナースコールを頻繁に押す。なぜ?と言う質問に対して、お前を困らせてやるため。と言う言動。
  4. 尿とりパッドを外さないで欲しいという、職員の声かけに耳を傾けようとしない。
  5. ナースコール対応せずにいると、階段から飛び降りれば、お前は困るだろ?と言う言動。
  6. お前は、使用人だから。と言う言動。

問題なのは、やはり階段から飛び降りると言われたことです。備品を壊すことや、排泄、ナースコール、これは、会社の考え的にも、職員でなんとかフォローしてくれよという所で、やはり怪我をされたり、命を落とされては、いけません。「お前は、困るだろ?」と言うことは、Yさんは我々職員がどうすれば困ることを見抜いているんです。職員一人一人を、見抜いている人なんだと思います。スキがあれば、やられてしまう。職員側にも落ち度はあると思います。そのスキがあること。テキストからでは、到底対処の仕方が解らない方でした。

会社のサポートスタッフが、Yさんに問いかけると、「俺の頭がおかしいんだ。この手が勝手にやってしまうんだ。」「職員のことはみんな好きだけど、俺が色々悪戯したから怒っているんだ。」「俺は、女が好きだ。これも病気なんだ。桜井さんのおっぱいを触っちまった。でも、もうしない。絶対にしない。」「悪いことをしたのだから、罰があって当然だ。」そんなことを話したそうです。

その人が、偉い人だと言うことが解ったのだと思われます。Yさんが言った罰と言うのは、階段から飛び降りると言う発言をしたことで、会社が居室を変えることを提案したからでした。

職員が集まり、サポートスタッフと会社の上の人間を交え、カンファレンスが始まります。まずは、職員がそれぞれ、Yさんをどう考えてるか?を聞かれます。

  1. 寂しさがあり、自分を上手く表現出来ない人
  2. 子供(幼稚)みたいな人
  3. 性格が異常なのではないか?(元気なときから、そう言う気質があり、理性によって押さえられていた部分。)
  4. 職員に精神的な混乱を与え、ストレス発散しているように思う。
  5. 仕事一筋で来た人なので、遊ぶ事がなかったのではないか?

そんな意見がありました。こうして改めて職員の考えを聞くと、随分と色々な意見があることに気づきます。私の場合は、そのストレス発散の一番最初のターゲットになったと思われ、他の職員から、あれは酷かった。と言われました。男としてのプライドがあるのなら、そこを引き裂こうとする感じだったよね。当時リーダー補佐の人からそう言われ、「プライドを引き裂かれて前に進めないようじゃ、この仕事は出来ないと思います。でも、どう進んで良いかが解らなかった。」私は、そう発言しました。

外から見ると、気さくに見え、一見接しやすいように思えるYさんですが、接したときにその難しさを思い知らされると、誰もが思っていたようです。事実、夜勤の職員が出社拒否症になっていました。私は、この気持ちが分かりました。我々は、ヘルパーであるが、ヘルパーであると同時に1人の人間である。入居者に対して、サービスを提供するのが、我々の仕事です。介護だけではなく、ホテルマンのようなサービスも同時求められるのです。しかし、そこを逆手にとって、サービスしろ!サービス。そう欲求されて、人間がどういう真理になるか、とても複雑な思いがします。それは、もう、心の中では、怒りの感情が渦巻いています。しかし、それを表に出したとき、Yさんの言葉を借りれば、『負け』になります。その闘いは、心に大きな負担をかけるので、ホームに行くのが嫌になります。その気持ち、とてもよく解りました。

サポートスタッフを含めると、とても話は進みます。トンネルの中で、出口の見つけ方を教えてくれるような、そんな感じを受けました。今、職員が行える事は何か?性格的な物が大きいので、難しいと思うが、何が考えられるか?そう話をまとめました。

会社のサポートとしては、やはり居室を変える事を最優先し、そのメリットを語りました。居室を一階に移せば、飛び降りるという危険性が少なくなる。一階には、必ず1人職員が居るのだから、Yさんと接する機会も増し、欲求は弱まるのではないか?このまま、ホームの上の階に居られて、本当に飛び降り事故が発生したときのことも含め、居室の移動を行った方が良いのではないか?そう語られました。そして、心療内科のカウンセリングを行い、その中から心が、穏やかに、多少でも今の状態から回避できたら。そのように付け加えられ、カンファレンスは終了しました。

Yさんとの闘いは、まだ続いています。しかし、本気で接すれば、いつかは解る物です。現在、職員が人事異動になって、知らない顔が増えたことに不安を感じているようです。その不安から、永礼盟を頼る事がある気がします。自分がつぶれない為に、少し距離を置き、全てを受容せず、必要なことだけを行っています。そして、入浴介助の時には、「わはは。わはは。」と、色々な話で盛り上がっています。訪問リハビリがあれば、今日の調子はどうだったかお聞きし、話に乗ってくれば、入浴で体がほぐれたところで私がお手伝いさせていただく。そんな対応をさせていただいています。

ある日、新しい命が誕生しました。その命に触れられたYさんの手が忘れられません。小さな命に、Yさんが触れた瞬間でした。たかが老人ホームですが、こうした触れあいを目のあたりにすると、人間が生きていく理由を、少しだけ頭に描いてしまいます。小さな、新しい命が、古い、大きな命に触れた瞬間、永礼盟の頭の中で、そんなことを思ったのでした。

2003.06.27


永礼盟

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